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★ 隆二が80’sカルチャーに魅了されたワケ 『CHAOS CITY』制作秘話 ★

   


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【オリジナル動画】今市隆二、80年代に行けたらやってみたいことサウンドを“新しい音楽”としてリバイバル






ーー『CHAOS CITY』のリードチューン「FUTURE LOVERS」のMVには驚きました。今回、空山基さんのセクシーロボットにインスパイアされたそうですが、サウンドはイントロから80年代志向、レトロフューチャー志向で大胆です。ここまで変化したきっかけはなんだったんでしょうか?

今市隆二(以下、今市):前作『ZONE OF GOLD』から1年半も経っているので、音楽シーンも変わってくるじゃないですか。自分のやりたい音楽も日々変わっていくなかで、今のポップミュージックの流れにある80’sがフィールして。それプラス、やっぱり音楽を作る側の人間としては、より多くの方に届けたいという想いがあるので、80’sをやることによって、上の世代の方には懐かしいと思ってもらえて、若い子たちには新しい音楽を届けられるかなと思ったのでやらせていただきました。

ーー今市さんにとって、『ZONE OF GOLD』以降、音楽の聴き方で最も変化したのはどんなことでしょうか?

今市:昔は結構偏った音楽を聴いていたけど、レギュラーラジオをやることによって、その壁がなくなって。もうジャンル問わず、いいなと思ったらクラシックでも何でも聴いています。80’sの音楽も今の自分にフィールしていいなと思って。LDHでもEXILE HIROさん世代の方々は、80年代のバブル時代をリアルに生きた人なので、そういう方の話を聴いてるとどんどん魅了されていきました。ディスコの雰囲気とか、その前にスーパーカーが止まっている感じとか、ちょっと海外っぽいニュアンスもあって、すごくキラキラしてるイメージなので、より80年代が好きになりましたね。

ーー1986年生まれの今市さんは、80年代のどんな楽曲やアーティストがお好きなんですか。

今市:スティーヴィー・ワンダーとかマイケル・ジャクソンあたりですけど、他にもいろいろな80年代の音楽を子供のときに聴いてたんですよね。だから掘っていくうちに、「この曲、この人がやってたんだ!」という発見もありました。Dead Or Alive「You Spin Me Round」も、ビジュアルが派手な人がやってたんだとか。『金曜ロードショー』で流れてた「Friday Night Fantasy」を聴くと、金曜の「映画をこれから見るぞ」っていう気持ちになりますし。もう30年、40年前になるんですけど、どこか懐かしくて、ちょっと切ない気持ちにさせてくれる哀愁やパワーが80年代の音楽にはあるなと思います。

ーーいつもソウルフルで、タメのきいた深いボーカルを聴かせる今市さんが、「FUTURE LOVERS」ではあえてライトに歌っていることにも驚きました。

今市:今回のアルバムでも曲によるんですけど、「FUTURE LOVERS」に関しては、レイドバックする必要もないし、80年代のビートで続けなきゃいけないっていう感覚があったので、ライトに歌ってるかもしれないですね。それとは逆に「Highway to the moon」はグルーヴが命の曲だと思っているので、そこはレイドバックして、ちょっと後ろにモタせたりしながらグルーヴ感は大事にしましたね。

ーーその「Highway to the moon」は、プラックミュージックを通過したリズムがシティポップも連想させますね。今市さんは、80年代のシティポップを聴くことはあるのでしょうか?

今市:ユーミン(松任谷由実)さんとか山下達郎さんとか、今シティポップって言われているジャンルは好きでしたね。それが今、世界的にちょっとしたブームになっていて。「Highway to the moon」は、「FUTURE LOVERS」のデモを集めていたときに上がってきた曲だったんですよ。サビのトップラインがすごく良くて、エモさを感じたし、ボーカリスト的な観点で、一発聴いただけで「やろう」って決めましたね。

ーー「Talkin’ bout love」は80年代感の中に、トラップ以降のビートも鳴っています。サウンドの懐かしさと今っぽさのバランスは意識されましたか?

今市:もちろんそうですね。今回のテーマは80’sなのですが、昔の音楽をそのままやっても何も意味がないと思っているので。昔の音楽を今に落としこむことによって、新しい音楽としてリバイバルするっていう考え方にすごくこだわって、新しいものを常に探しています。「Talkin’ bout love」を最初に作ったときは、まったくこういうビートじゃなかったんですよ。もうちょっとR&Bっぽい2・4(2拍と4拍を強めたリズム)だったんですけど、いつも一緒に作っているチームとしっかり話して、「8分の細かいビート感で刻んでほしい、疾走感も出したい」と伝えたら、トラックメイカーからすると「それをやっちゃうと、ちょっといなたくなっちゃうかもな」っていうやりとりがあったんです。だけど、修正依頼して上がってきた一発目のトラックを聴いたときは、もう家でテンションが上がって喜びましたね(笑)。トラップというか、ちょっとドラムンベースっぽい要素もあるけど、すごく際どいラインを行っていて聴いてて心地いいし、弾ける感じもあって「Talkin’ bout love」はすごく満足できたなと思っています。

ーー「オヤスミのくちづけ」はバラードですが、これまで以上に優しい歌声が印象的です。

今市:2年前ぐらいに作った曲で、「歌謡バラード」というテーマで作っていたんです。歌詞の内容は、人が最期に天国に行く前に大切な人に会いに行くというストーリーなんですけど、そのストーリーの絵が前から自分の頭にあって、具現化したいと思っていました。その歌詞の世界観をやりたいなと思ったときに「オヤスミのくちづけ」の曲を作っていったら、自分が思い描いてたイメージにぴったり合って、歌詞もすぐ書けました。切ない話ではあるんですけど、こういうテーマの曲を届けることによって、家族でも友達でも、大切な人に対して少しでも優しくなれるかな、っていう気持ちを込めて作りました。

ーー「歌謡」というのは今回のコンセプトにあったんですか?

今市:もともと「オヤスミのくちづけ」を作ったときは、『CHAOS CITY』の曲として作っていなかったんです。でも、歌謡の部分では80年代に通じるものがあったので、今回収録しようということになりました。

ーー「I’m just a man」は、普遍的なR&Bバラードですね。

今市:「I’m just a man」は2年前の夏に作った曲で、思い入れがあるんですよ。YVES&ADAMSっていう作家チームと今、密になって制作してるんですけど、あの2人と一緒に初めて作った曲で。この曲はウェディングソングで、自分の幼稚園からの友達がその時期に結婚したので、「何かできることないかな?」と思って作った曲です。当時は3拍子も作りたかったし、いろんなことが合致しましたね。王道なウェディングソングじゃなくて、男目線で不器用なプロポーズを切り取ったシーンを描きました。この曲は緊急事態宣言になったときに、プリプロの状態で自分のInstagramで配信もしたんです。そこからトラックも豪華にして、よりしっかりと届けたいなという気持ちがありました。『CHAOS CITY』は架空の都市ですけども、現代のこともテーマにしているので、そういう意味も込めて今回収録しました。

ーー「オヤスミのくちづけ」も「I’m just a man」も2年前に制作しているし、すごく時間をかけていますね。

今市:そうですね。曲は基本的にずっと作っていくスタンスですし、作っても出しどころが決まっていなかったりするので、ストック楽曲はどんどん溜まっていきます。本当に好きな曲だったので、今回入れられて良かったと思います。

ーーストックが溜まっていくということは、制作ペースも早いんですね。

今市:そうかもしれないですね。グループもあるので大変ですよ。また今も作っています。

ーーなるほど、そうですよね。

今市:制作の時期は制作だけに集中できたら一番良いのですが、なかなかそうもいかないから。

ーーその想いがアルバムの最後に入っているのは素敵ですね。ボーナストラックでは、「ALT FUTURE LOVERS」にm-floの☆Taku Takahashiさんが参加しています。どういう経緯だったんでしょうか?

ティポップを盛り上げたひとりでもあるので、もうひとりのリミックスは誰かなと考えたときに、☆Takuさんしかいないなと思いました。

ーー☆Takuさんとはリミックスのコンセプトについて話されましたか?

今市:LDHアーティストとたくさん関わりを持たれている方なんですけど、僕が一緒に仕事するのは初めてでした。直接☆Takuさんから電話をもらって、「どうしようか?」って言ってくれて。そこで改めて「FUTURE LOVERS」の歌詞を説明して、「テーマとしては、アンドロイドと人間の禁断の恋っていうストーリーなんですけど、でも悲しみだけじゃなくて、明るい未来もあるかもしれないという期待も入れたいんですよね」という話をしたときに、「わかりました」って。トラックを作ってもらったら、「未来の恋の切なさ、絶望、期待、希望を入れました」とLINEが補足で来たんです。想いの部分にしっかり重きを置いて作ってくれる方でしたね。リミックスを聴いたら、ストーリーがめちゃくちゃ音から伝わってきて、リミックスであんなに感動したのは初めてでした。今度オリジナルの曲を作ろうという話もさせてもらってます。

ーーそれは楽しみですね。Night Tempoは、海外でのシティポップ・ブームの火付け役ですが、彼の今までのリミックスで気に入ったものはありましたか?

今市:最近だと松原みきさんの「真夜中のドア〜Stay With Me」はすごく好きだし、山下達郎さんがKinKi Kidsに提供した「Kissからはじまるミステリー」とかBTSの「Dynamite」もやってるじゃないですか。本当に何を聴いてもNight Tempo色になるし、やっぱり心地いいなってシンプルに思いますね。

ーー今市さんの楽曲をリミックスするにあたって、Night Tempoとどんな形で進めたのでしょうか?

今市:Night Tempoはシティポップを現代に広めたひとりでもあるし、今回の『CHAOS CITY』のテーマにも合ってるので、自分から熱望して。世代は一緒だけど面識もないし、新譜をやるイメージもなかったんですけど、快諾してくれました。自由にクリエイティブをしたいということで、やっぱりNight Tempoにお願いする以上、自分も任せたほうがいい感覚があったので、BPMから何から何までも全部お任せしましたね。

ーーでき上がってきたNight Tempoのリミックスを聴いていかがでしたか?

今市:流石だなと思うくらいNight Tempoらしい曲になったなって。ちゃんと展開もつけて仕上げてきてくれて、また新しい「Highway to the moon」の魅力を出せているかなと思います。

ーー彼の場合、「ここにその音を入れてくるのか」とか「ここにそのキックを入れてくるのか」とか、80’sを愛しつつも、今のトレンドを反映することで必ずしも80’sの文脈だけではないリミックスをするじゃないですか。その辺りの満足度もありましたか?

今市:そうですね。たとえばホーン系の音もすごく気に入ってたので、何個かパターンを出したんですけど、やっぱり最終的にはNight Tempoが出してくれたものが一番良かったな。Night Tempoの中で「自分がこれ以上やっちゃうとNight Tempoじゃなくなっちゃう」みたいな線引きがあると思うんですよ。「もっと派手に」という依頼もしたんですけど、「音数が増えると違うものになっちゃう」っていう一線はしっかり持っている人だなと思いました。言葉で伝えられない美学やセンス、音楽性のイメージを持っている人だと思います。だから実際に会ってみたいですよね。

ーー早く対面できるといいですね。

今市:結構な音楽オタクだっていう話は聞いているので、そういう気質の人はやっぱりすごいなと思いますね。音楽に集中できるっていうのはすごいことだと思うし、やっぱり納得させられるなって。

ーーそして、今回のアナログ盤のジャケットは、なんと永井博さんですね。

今市:80’sは音楽を含めたカルチャーが面白いなと思っていて、ディスコもそうだし、今回オリジナルアパレルブランド「RILY」も80’sのバイブスで作っています。その時代を生き抜いた人たちの話を聞くなかで、永井さんのお名前は出てきたし、絵を見たら誰が見ても「永井さんの絵」となる作品じゃないですか。80’sを表現する上で、永井さんが絵を描いてくれたら、自分のやりたいことが伝わるし、ありがたいコラボになるなと思ってお声がけさせていただきました。

ーー永井さんが描いたジャケットをご覧になっていかがでした?

今市:もう最高でしたね。やりたいことやイメージを永井さんから聞いてくださいました。「RILY」は百合をモチーフにしているんですけど、絵にも百合を入れてくれたり。長年絵を描いているアーティストは、自分のスタイルとか絶対あるじゃないですか。でも、フランクに接してくれますし、話を聞いて作ってくれた感じですね。

ーーたしかにジャケットにはいろんな要素がありつつも、パッと見て永井さんの絵でしかないですね。

今市:ですよね、最高です。

ーーこうして世代も国境も越えて、いろいろな人と80’sリバイバルのアルバムを作ってみて、感触はいかがですか?

今市:「FUTURE LOVERS」を配信して、「合ってるね」と言ってくれる人も結構いて。第三者が聴いてどう思うかって自分じゃわからないけど、自分の声に合っていると思ってもらえたので、一発目としては良かったなと思っています。『CHAOS CITY』は、アルバムの名前だけじゃなくて、長期を見据えたプロジェクトでもあります。そういう意味で、ずっと80’sリバイバルをやろうとは思ってないし、見せ方もどんどん変えていくので、最初としてはいいスタートを切れたなと思いますね。



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